犬のおもちゃ、どう遊ぶ?

犬のおもちゃ、どう遊ぶ?

前回の記事では、「犬にとって、おもちゃって何だろう?」というところから、犬が持っているさまざまな行動と、おもちゃの役割について考えました。

では実際に、おもちゃで遊ぶときはどうすればいいのでしょうか。

引っ張りっこでは、人が勝った方がいい?

興奮させすぎるのはダメ?

おもちゃは出しっぱなしにする?片付ける?

知育玩具は、難しいほど頭を使えて良い?

犬のおもちゃには、意外とたくさんの「こうした方がいいらしい」があります。

今回は、飼い主が迷いやすいおもちゃ遊びについて、犬の行動や学習の視点から考えてみます。

引っ張りっこで、犬に勝たせてもいい?

昔からよく聞くのが、

「引っ張りっこでは、人間が最後に勝たなければいけない」

という話です。

犬におもちゃを取らせると、「自分の方が上だ」と思うようになる。

そんな説明を聞いたことがある人もいるかもしれません。

でも、人と犬の遊びを調べた研究では、引っ張りっこなどのゲームで犬が勝ったか負けたかと、いわゆる“支配性”を示す行動との間に、一貫した関係は見つかっていません。

つまり、

犬におもちゃを取られたからといって、人間の立場が下になるわけではありません。

引っ張りっこは、人と犬が一緒に楽しめる遊びのひとつ。

その犬が好きなら、犬に取らせてあげても大丈夫です。

むしろ、おもちゃ遊びそのものを「ご褒美」として使うこともできます。

おやつだけが報酬ではありません。

「これができたら、一緒に引っ張りっこしよう!」

というのも、その犬にとって引っ張り遊びが大好きなら、立派なご褒美になります。

興奮させすぎるのはダメ?

ボールを追う。

ロープを激しく引っ張る。

おもちゃを振り回して走る。

犬がおもちゃで遊んでいると、かなりテンションが上がることがあります。

そこでよく聞くのが、

「犬を興奮させない方がいい」

という話。

でも、興奮すること自体が悪いわけではありません。

遊びには、ある程度の興奮が伴います。

大切なのは、

その犬が、遊びを終えたあとに落ち着けるか。

というところ。

おもちゃを片付けても延々と探し続ける。

遊びが終わってもなかなか休めない。

人の手や服まで噛むようになる。

声をかけてもまったく反応できない。

そんな状態まで興奮が高まっているなら、少し遊び方を調整した方がいいかもしれません。

短い時間で区切る。

途中で休憩を入れる。

激しい遊びのあとに、においを嗅ぐようなゆっくりした行動を入れる。

その犬が無理なく切り替えられる範囲で楽しむ。

「興奮させない」のではなく、

興奮しても、ちゃんと戻ってこられる遊び方にする。

くらいに考えるとよいと思います。

人がルールを作る必要はある?

犬に勝たなければいけないわけではない。

興奮することも悪いことではない。

では、好きなように遊ばせればいいのでしょうか。

ここは少し違います。

人と犬の双方が安全に遊ぶためのルールはあった方が便利です。

たとえば、

人の手ではなく、おもちゃを噛む。

必要なときに遊びを中断できる。

おもちゃを交換できる。

興奮が強くなりすぎたら休憩する。

こうしたことを覚えておくと、人と犬の遊びはずっと安全になります。

ただし、そのルールは、

「人間の方が上だと教えるため」ではありません。

犬を従わせるためではなく、

一緒に安全に遊ぶための共通ルール。

そう考えると分かりやすいと思います。

現在の獣医行動学では、犬のトレーニングには報酬を使った方法が推奨されています。

「離して」を教える場合にも、無理やり口から奪うのではなく、おやつや別のおもちゃと交換したり、「離したらまた遊べる」と犬に覚えてもらう方法があります。

遊びの中でも、犬に「何をすればいいのか」を教えることはできます。

フードトイは、難しいほどいい?

転がす。

舐める。

鼻や前脚を使う。

どうすれば中に入ったフードが出てくるのか考える。

フードトイやパズルトイは、犬に採食や探索、問題解決の機会を作れるおもちゃです。

実際に、フードトイを使うことで食事にかかる時間が延びたり、活動量が変化した研究もあります。

でも、

難しいほど頭を使うから良い。

というわけではありません。

まったく食べ物が取れない。

何度やっても成功しない。

途中で諦める。

吠えたり、おもちゃを乱暴に扱ったりする。

そんな場合は、その犬にとって難易度が高すぎる可能性があります。

「考えさせる」ことと、「できなくて困らせる」ことは別です。

最初は簡単に。

少し工夫したら成功できるくらいから始める。

慣れてきたら、少しずつ難しくする。

そして、必ずしもすべての犬がフードトイを好むわけでもありません。

最近の研究でも、犬は食べ物を簡単に食べられる状況より、必ず“働いて食べる”方を選ぶとは限らないことが示されています。

ここでもやっぱり、

犬が楽しんでいるかどうか。

が一番大切です。

おもちゃは出しっぱなし?それとも片付ける?

これも、よく意見が分かれるところです。

「いつでも遊べるように全部出しておく」

「飽きないように毎回片付ける」

どちらか一方が正解というわけではありません。

いつでも好きなおもちゃを選べることは、犬自身に選択肢があるという意味ではメリットがあります。

一方で、人と一緒に遊ぶための特別なおもちゃを別にしておけば、そのおもちゃ自体が、

「一緒に遊ぼう!」

という合図になります。

そして何より重要なのは、安全性です。

噛みちぎって飲み込む犬。

布や綿を食べてしまう犬。

おもちゃを破壊するのが非常に得意な犬。

そういう犬には、人が見ていないところで与えない方がいいおもちゃもあります。

だから、

ひとりで安全に遊べるものは出しておく。
人と一緒に使うものや、壊す可能性のあるものは管理する。

くらいの使い分けが現実的です。

すぐ壊すのは、悪い遊び方?

せっかく買ったぬいぐるみ。

渡して5分。

無惨な姿になっている。

飼い主としては、

「……1,500円。」

となるところですが。

犬にとっては、その「壊す過程」そのものが遊びになっている場合があります。

噛む。

振る。

引っ張る。

ちぎる。

中身を取り出す。

こうした行動そのものを楽しんでいる犬もいます。

だから、

壊した=正しく遊べなかった

とは限りません。

とはいえ、壊れたおもちゃを飲み込めば、話は別です。

笛。

ロープの繊維。

布。

綿。

ゴムやプラスチックの破片。

犬が飲み込める大きさになった時点で、おもちゃとしての役目は終わりです。

壊すことが好きな犬なら、

「壊させない」だけではなく、

壊すことを前提に、安全に管理する。

という考え方も必要です。

丈夫なら、安全とは限らない

犬のおもちゃでは、

「とにかく壊れないものが欲しい」

という相談もよくあります。

もちろん、簡単にバラバラにならないことは大切です。

でも、

硬いほど安全、というわけでもありません。

犬が強く噛んだときにまったくたわまないような非常に硬いものは、歯に大きな力がかかることがあります。

一方で、柔らかすぎて簡単に大きな破片を飲み込めるものも危険です。

さらに、犬の大きさに対して小さすぎるおもちゃには、丸飲みや窒息のリスクがあります。

だからおもちゃ選びでは、

丈夫さだけではなく、

犬の体格。

噛む力。

遊び方。

歯の状態。

飲み込む癖があるか。

まで考える必要があります。

そして、どんなおもちゃでも「絶対に壊れない」「絶対に安全」というものはありません。

定期的に状態を確認し、傷んできたら交換する。

初めて与えるおもちゃは、まず人が見ているところで遊ばせる。

シンプルですが、これがとても大切です。

良い遊び方は、犬によって違う

引っ張りっこで犬を勝たせても大丈夫。

興奮すること自体も悪いことではない。

おもちゃを出しっぱなしにしてもいいし、特別なものだけ片付けてもいい。

壊すことそのものを楽しむ犬だっています。

おもちゃ遊びには、

「すべての犬に共通する正しい遊び方」

があるわけではありません。

見るべきなのは、その犬です。

楽しんでいるか。

無理をしていないか。

安全に遊べているか。

遊びが終わったあと、穏やかに過ごせるか。

人と犬の双方が楽しいか。

前回の記事で、

「良いおもちゃは、犬が選ぶ」

と書きました。

遊び方も、たぶん同じです。

人間が一方的に「正しい遊び」を決めるのではなく、その犬が何を楽しみ、どう関わるのが心地よいのかを見ながら、一緒に作っていくもの。

おもちゃは、犬をコントロールするためのものではありません。

犬と人が一緒に楽しい時間を過ごしたり、犬自身が夢中になれる時間を作ったりするためのもの。

ルールは、その楽しさを奪うためではなく、

安全に、長く楽しむためにある。

それくらいが、ちょうどいいのだと思います。